和歌山県高野町にある高野山、ここは日本を代表する真言密教の聖地であり「紀伊山地の霊場と参詣道」として知られている場所です。
その神秘的な雰囲気と歴史的な価値から、高野山は世界遺産に登録されています。
高野山の豊かな文化遺産や美しい自然環境は世界中から注目を集め、多くの人々の心を惹きつけています。
ここでは高野山の魅力や、世界遺産登録された理由についてご紹介します。
Contents
高野山とは
高野山とは、平安時代のはじめ頃に日本が生んだ偉大な聖人である弘法大師空海によって、真言密教の根本道場として開創した場所です。
寺でありながら高野山と呼ばれる理由は、山全体が一つの境内地と考えられていることによります。
この山そのものが総本山金剛峯寺であり、多くの関連寺院が集まる特別な場所なのです。
この構造は「一山境内地(いっさんけいだいち)」として、山そのものが霊的な中心であり、その中に多くの寺院や修行の場が広がっていることを示しています。
世界遺産に登録された理由
高野山が世界遺産に登録された理由は複数ありますが、その主な理由は以下の通りです。
- ある期間を通じて、またはある文化圏において、人類の文化や技術の発展において人類の価値の重要な交流を示す場所である
- 現存する文化的な伝統や文明の証拠として貴重な存在である
- 人類の歴史的な時代を象徴する建築様式や建築物群、技術の集積、または景観の優れた例である
- 特筆すべき普遍的な意義を持つ出来事、現存する伝統、思想、文化や信仰と直接的に関連する場所である
参照:Unesco
高野山はミシュラン旅ガイドで三ツ星を獲得している
2009年にフランスで発行された日本への旅行案内書「ミシュラン・グリーンガイド・ジャパン」で、高野山が最高ランクである三ツ星を獲得しました。
高野山が三ツ星を獲得した理由は、その独特な雰囲気の空間にあり、「浮世と全く異なる時間が流れている」と評されました。
「日常から隔絶された環境は、西洋人にとって神秘的な日本を体感できる」と記され、高野山の奥の院が特に魅力的な場所として挙げられています。
高野山の魅力とは
世界遺産となった高野山には数多くの魅力的なスポットがありますが、ここではその中でも人気のポイントをご紹介します。
117の寺院
広大な高野山の内には塔頭寺院(たっちゅうじいん)と呼ばれる117もの寺院が存在します。
かつては、山への巡礼には「御師(おし)」と呼ばれる案内役が不可欠でした。
御師は巡礼者の案内や世話をするのですが、一つの地域に一人の御師と決められていたため、その結果、寺院の数が増えていったということです。
大門
大門は高野山の総門であり、結界の入り口とされている場所です。
国内最大級の木造二重門として国の重要文化財に指定されています。
左右には国内で2番目に大きい金剛力士像が安置されており、その大きさや佇まいは迫力満点です。
近くにひとつだけ願いを叶えてくれると言われている「お助け地蔵」が祀られており、そちらも人気のスポットです。
金剛峯寺
高野山の数ある寺院の中でも、高野山真言宗総本山の寺院である「金剛峯寺(こんごうぶじ)」が一番の見どころです。
金剛峯寺には、300年以上の歴史を誇る大門や、空海が高野山の開創後に最初に整備を行ったとされる「壇上伽藍」、高野山の総本堂である「金堂」、国内最大級の石庭である「蟠龍庭(ばんりゅうてい)」などの文化財を見学することができます。
蟠龍庭
蟠龍庭(ばんりゅうてい)は、弘法大師御入定1150年・御遠忌大法会の際に記念して造園された庭で、約5000坪を誇る国内最大級の石庭です。
庭園の砂には「雲海」が表現され、石は龍を表現しており、雲海の中で左に雄、右に雌の一対の龍が向かい合い、奥殿を守っているように表現されています。
これほどの大庭園ですが、作者は不明なのだそうです。
春にはシャクナゲ、秋には紅葉と、四季の移ろいを感じさせる場所でもあります。
三鈷の松
壇上伽藍にある金堂と御影堂の間にある大きな松、それが三鈷の松(さんこのまつ)と呼ばれています。
普段目にする松の木の葉は2本又のものが多いですが、その松の木からは滅多にない3つ又の葉が落ちている事があり、それを持っていると幸福になれると言われているご利益があるスポットです。
三鈷の松の周りは3又の葉を探す人の姿で常に賑わっています。
三鈷の松の由来
弘法大師空海は唐に渡り、仏教の修行をして日本に帰国する前に、真言密教の教えを広める場所を模索していました。
その際に、空海は密教法具である三鈷杵(さんこしょ)を空に向かって投げました。
すると三鈷杵は天高く舞い上がり、日本に向かって飛んでいったのです。
帰国後、空海は投げた三鈷杵を探し回ったところ、高野山で松の木に引っかかった三鈷杵を発見しました。
この出来事が言い伝えられ、三鈷の松の葉は縁起が良いものと言われるようになったのです。
奥之院
転軸山と摩尼山の間の谷に広がる慰霊塔群のことを奥之院と言います。
慰霊塔とは、骨や遺髪などがなくても故人を悼む気持ちや魂を慰めるために建立される塔のことです。
奥之院は高野山の霊力を信仰する人々や、大師信仰を持つ人々が信仰の源としている場所です。
上杉謙信や武田信玄、豊臣秀吉をはじめとする戦国武将、江戸時代の名奉行である大岡越前の守、その他にも紀州徳川家の歴代の当主や天皇家に近い近衛家などの、20万基もの供養塔があります。
御廟橋から先は聖域とされているため、撮影は厳禁です。
渡る際には身なりを整え、礼拝をしてから渡りましょう。
精進料理
古来より僧侶が修行する場である高野山では精進料理が有名です。
精進料理とは、「殺生を避ける」という仏教の考えに基づいた食事のことを指します。
肉や魚、香りの強い野菜を使用せず、野菜をはじめとした豆やこんにゃく、山菜などで作られた料理は身体に優しくて栄養も満点です。
高野山周辺には精進料理を提供する飲食店や宿坊が数多くあります。
宿坊体験
117ある塔頭寺院のうち51ヵ寺が宿坊として参詣人に宿を提供しています。
お寺に泊まれる宿坊では護摩祈祷や阿字観の参加、写経体験など、仏教を身近に感じる体験ができ、食事では精進料理を楽しむことができます。
阿字観・写経体験
阿字観とは真言宗での伝統的な呼吸・瞑想法であり、一般的に言われる「禅」のことを指します。
金剛峯寺では小学生以上なら誰でも阿字観体験に参加することができます。
やり方も僧侶の指導があるので、初めての人でも難しくありません。
写経体験も、仏教の中心的なお経である般若心経を一字一句清書することによって、心身を集中させて雑念を払い、心の安らぎを得ることができます。
忙しい日常のことが頭から離れて、落ち着いた心で過ごすことができるでしょう。
まとめ
神秘的な雰囲気と歴史的な価値を持つ高野山は、日本を代表する聖地として、世界中の人々の心を惹きつけています。
歴史的な背景や建築物の魅力だけではなく、厳かな雰囲気と杉木立などの自然の美しさが感じられるパワースポットでもあります。
高野山を歩けば徐々に神聖な気持ちになって、やがて落ち着いた心を得ることができるでしょう。
是非高野山を訪れ、その思想や文化に触れてみてください。