コラム

棕櫚箒は和歌山の伝統工芸品でとても希少品!一度使ったら手放せないホウキの魅力をご紹介

和室と棕櫚箒

和歌山の伝統工芸品である「棕櫚箒(しゅろほうき)」。

その誕生は江戸時代より以前に始まり、丈夫で長持ちする掃除道具として、今もなお多くの人に使われています。

では、なぜ棕櫚箒はこれほど長きに渡って多くの人から重宝されてきたかご存じでしょうか?

ここでは和歌山が誇る伝統工芸品「棕櫚箒」の魅力についてご紹介します。

棕櫚箒とは?

棕櫚箒とは

棕櫚箒(しゅろほうき)とは和箒の中の一種であり、穂先に棕櫚の木の幹の皮が使用されている箒のことを言います。

歴史的には江戸時代以前より存在しており、棕櫚箒には数百年の歴史があると言われているほどです。

この歴史を受け継ぐ伝統的な技術によって、熟練の職人たちが現在も一本一本丁寧に製作しています。

棕櫚の木

棕櫚とはヤシ科の樹木で、枝がなくまっすぐに伸びた幹が特徴的な、南国を感じさせる雰囲気の木です。

強く丈夫で柔軟性があり、弾力や耐久性にも優れています。

棕櫚自体が油分を含んでいることから水に強いとされ、古くから蓑(みの)や笠(かさ)、魚網の材料として利用されてきました。

和歌山県紀美野町周辺はかつて棕櫚の群生地だった

和歌山県野上谷(現在の和歌山県紀美野町周辺から有田川流域)は棕櫚製品で広く知られている土地ですが、ここはかつて棕櫚が自生している地域でした。

しかし現在では原材料を台湾や中国から輸入しています。

棕櫚は毎年樹皮を剥がなければ質が低下するのですが、現在は棕櫚の樹皮を剥ぐ熟練した職人がいないため、日本国内の棕櫚だけでは製品を作ることが難しくなったためです。

棕櫚箒の歴史

棕櫚箒の歴史

棕櫚箒の起源については、歴史的な記録がほとんど残されていないために具体的な時期は確認されていませんが、江戸帚(ホウキモロコシというイネ科の草を編み上げて作られた箒)よりもはるかに古い歴史があると考えられます。

江戸時代の絵画には一般的な箒として棕櫚箒が描かれていることが確認されており、江戸時代以前から使われていたと考えられています。

棕櫚箒は主に京都で普及し、和歌山県野上谷地方では江戸時代後期には既に製造が行われていたとされています。

昭和時代に入ると大量生産の洋箒に押されて生産量が減少しましたが、近年、その丈夫さ、使い心地、埃を舞い上げることなくゴミを集める機能性、見た目の美しさなどから再び注目されており、現代の生活の中でも評価が高まっているのです。

棕櫚箒の魅力

棕櫚箒を愛用する女性

棕櫚箒の魅力は数多くありますが、ここではその一部をご紹介します。

丈夫で長持ちする

棕櫚は耐久性に優れている上に水にも強いため、適切にお手入れを行えば10年や20年と、長く使える掃除道具です。

畳やフローリングで使用して何年も経てば穂先は短くなってきますが、その場合は畳やフローリング用として利用した後に廊下や玄関、最後は天井掃除や外掃き用に転用することで棕櫚の使用寿命を延ばすことができます。

棕櫚は掃除機と異なり故障の心配がないため、末永く使うことができます。

埃が舞い上がりにくく付いたごみが取りやすい

棕櫚の繊維が細かいため、撫でる様な掃き方でごみを集めることが埃を舞いにくくしてくれます。

また、天然素材なので静電気が発生しないことから、箒の穂先に絡まった埃や髪の毛などは簡単に取り除くことができます。

掃除機より軽くてコードレスだから持ち運びが楽

例えばコード付き掃除機で掃除をしていると、部屋を移動するたびにコンセント口を差替えなければならない、コードが届かなくて掃除しきれない箇所がある、別フロアに移動するたびに掃除機を運ばなければならない等、意外と面倒なことに気付きます。

その点棕櫚箒なら軽くてコードレスだから、それらのお悩みがすべて解消するのです。

特に階段掃除は棕櫚箒で掃除すれば、掃除機の使用に比べて楽に感じることでしょう。

天然素材なので環境に優しい

棕櫚箒はヤシ科の棕櫚から取れる皮の繊維から作られています。

掃除機のように電源や排気を必要としないため、夜中の掃除や赤ちゃんが寝ている隙の掃除、ペットがいる家の中の掃除も問題なく行えます。

また、畳やフローリングの掃除を続けていくことで、棕櫚の繊維に含まれている油分が床に艶を与えてくれるというメリットまであるのです。

インテリアとして映える

近年より続く昭和レトロブームの影響もあってか、箒という存在自体がノスタルジーを象徴するアイテムとして注目されるようになりました。

インテリアとして飾りつつも、気になるゴミを見つけたらすぐに手に取って掃除ができるという一石二鳥の便利アイテムとして、若い世代からも支持を受けています。

参照:西武園ゆうえんち 夕日の丘商店街

棕櫚箒の種類

棕櫚箒を使いこなす女性

棕櫚箒にも様々な種類が作られています。

本鬼毛箒(ほんおにけほうき)

本鬼毛箒とは、その品質の高さから棕櫚箒の中でも最上級品と言われており、他の和箒と比較しても、その耐久性は群を抜いています。

この特別な箒は、棕櫚皮やほぐした未選別の繊維(通称:タイシ)から一本ずつ手で抜き集められた「鬼毛(本鬼毛・タチケ)」と呼ばれる素材が主原料です。

その結果、太くて美しい本鬼毛箒が生まれます。

耐久性に優れ、修理を施せば15年から20年は問題なく使用できると言われており、「一生に3本あれば足りる」とまで言われている箒です。

鬼毛箒(おにけほうき)

本鬼毛箒と混合されることが多いですが、本鬼毛箒と鬼毛箒は品質と製法が異なります。

本鬼毛箒が1本ずつ手で選別して抜き集めた本物の鬼毛に対して、鬼毛箒は未選別の棕櫚繊維である「タイシ」で作られています。

未選別で不揃いなタイシで作られた箒ではありますが、本鬼毛箒に次いで丈夫で長持ちする箒です。

以前はタイシ箒という名で呼ばれていましたが、近年は鬼毛箒の名で流通しています。

皮箒(かわほうき)

昔から一般の家庭で広く使われている箒は、室内箒(座敷箒)として認知されている皮箒です。

棕櫚の木の幹から一枚ずつ剥いた棕櫚皮をそのまま丸めて束ね、箒の穂先になる部分だけをほぐして製作されます。

素朴で手軽な加工方法を採用しているため、皮箒はさまざまな棕櫚箒の元祖とされています。

一般的な品質の皮を使用した箒は耐久年数が2年から5年程度、上質な皮箒は10年から15年ほどとされています。

棕櫚箒の使い方

棕櫚箒の保管方法

棕櫚箒の基本的な使い方は、箒を寝かすのではなく棕櫚の穂先を立てて、床を撫でるように軽く掃くようにしてください。

床に強く押し付けて掃いてしまうと穂先が曲がってしまい、長く使えなくなる原因になります。

畳を掃く場合は床板の目に沿って掃きましょう。

部屋と部屋を行き来して掃き掃除をすると、ドアや襖などのレールにゴミが詰まる原因になります。

掃いたゴミは各部屋でまとめることをお勧めします。

和歌山の伝統工芸品である棕櫚箒は一家に一本欲しい箒だった

和歌山の職人が時間と丹精を込めて作る棕櫚箒は、伝統工芸品でありながらも実用的な掃除道具として、どれだけ時代が変化しようとも魅力が変わらない貴重なお品です。

一度手に取って使ってみれば、穂先で撫でるような滑らかさに感動することでしょう。

一家に一本棕櫚箒で、おしゃれで経済的でエコロジーな掃除方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。