釣りが趣味の人にとって、竿などの釣り道具には様々なこだわりがあることでしょう。
釣り道具にも、その時代によって流行の素材や形などがありますが、今も昔も変わらない人気の釣り道具というのもまた存在します。
そのうちの1つに紀州へら竿という昔からの技法で作られた釣り竿があることをご存じでしょうか?。
ここでは和歌山が誇る伝統工芸品、紀州へら竿についてご紹介します。
Contents
紀州へら竿とは
紀州へら竿は、和歌山県紀伊半島地域(紀州)で伝統的に使われてきたヘラブナ釣りに適した竿のことを指します。
伝統的な職人技で制作され、竹を加工してひとつひとつ手作りで作られている美しい伝統工芸品です。
紀州へら竿の完成までには、一人の職人が1本の完成までに半年~1年以上を費やします。
施された装飾の美しさもさることながら、軽量でありながらもしっかりとした強度を持ち、浮きのアクションや魚の引きに適したデザインとなっています。
工芸品のため高価な品ではありますが、竿の寿命は100年を超えると言われており、釣り愛好者や競技者には憧れの竿として今でも広く愛されているのです。
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ヘラブナ釣りについて
ヘラブナとはどんな魚?
ヘラブナは日本の川や湖に生息する一般的な淡水魚で、琵琶湖に生息するゲンゴロウブナが変異して品種改良された魚です。
他のフナと比べて魚体の体高が高く、大きいものだと50~60cm以上にも成長します。
名前の由来は諸説ありますが、平たいフナの「ヒラブナ」が訛って「ヘラブナ」になったという説があります。
ヘラブナ釣りって他の魚釣りと何が違うの?
ヘラブナ釣りは魚を食べるための釣りではなく、浮子(ふし)のアクションや魚の引きを楽しむことが中心の釣りです。
昭和初期頃から流行となり、「釣りはフナに始まりフナに終わる」という格言ができるほどの人気の釣りでした。
ヘラブナは非常に臆病な魚で、音や水温にとても敏感です。
そして引き味が強く、特殊な釣り方が必要になります。
仕掛けも細かなアタリを感じるために様々な種類の浮きを使い、ヘラブナの泳ぐ層が気圧、水温、光量、水流などによって変化するので、練りエサの種類も多岐にわたります。
このヘラブナ釣りは、釣りの楽しさに魅了された人々が、より多くの魚を釣り上げたいという競技心から様々な競技ルールが設けられ、ヘラブナ釣りはスポーツとして確立されました。
そして、スポーツ化の過程で様々な道具や装備が開発されてきたのです。
参照:へら鮒天国
紀州へら竿の地に宿る匠の技とその歩み
紀州へら竿の主材料の一つである高野竹、その産地である高野山の麓にある橋本市こそが「紀州へら竿の里」と呼ばれている紀州へら竿の製造が盛んな地域です。
橋本市には駅舎をリノベーションしたへら竿工房があり、へら竿の工房見学をはじめ、制作体験などが行えます。
紀州へら竿の制作工程
紀州へら竿ができるまでには竹切りから始まり、その後も様々な工程があります。
細かな作業工程を挙げれば130以上の工程になりますが、おおまかに挙げて以下のような工程です。
- 原竹の乾燥
- 生地組み
- 火入れ
- 中抜き
- 込み削り
- 絹糸巻き
- 漆塗り
- 差し込み
- 握り
- 穂先削り
- 胴漆塗り
- 仕上げ
紀州へら竿は様々な系統に分かれており、それらの竿を区別するためには、作家や作品の名前である竿銘が竿に冠されています。
紀州へら竿は2013年には経済産業大臣によって国の伝統的工芸品に指定され、2020年度全国伝統的工芸品公募展では日本伝統工芸士会会長賞を受賞しました。
紀州へら竿の過去と未来
ヘラブナ釣りが最盛期だった頃には、紀州製竿組合員の竿師は約150名所属していました。
しかし、釣り場の減少などによってへら竿が使われる機会が減ったため、現在では竿師の数は30名程までに減少しています。
そのため、和歌山の伝統工芸品である紀州へら竿を継承していこうと、現在後継者の育成に力を入れています。
一人でも多くの人に和歌山の伝統工芸品の素晴らしさを知って欲しいという思いから、現在橋本市ではふるさと納税の返礼品として紀州へら竿を送付しています。
紀州へら竿は和歌山の竿師が丹精込めて作り上げた芸術品、手に入れれば釣り愛好家の注目の的に
紀州へら竿は制作時の工程数からも分かるように、時間を掛けて丁寧に作られた芸術品といっても過言ではありません。
高価な竿ではありますが、それゆえに持っているだけで周りの釣り人から一目置かれること請け合いです。
ヘラブナ釣りを100%楽しむなら、紀州へら竿を使うことをお勧めします。